今年は、①相談員 山下 治子さんと、②福井 聖子先生が発表を行いました。
第32回日本外来小児科学会年次集会
2023年9月9日(土)
会場 ▶ パシフィコ横浜ノース
①外的要因による事象を主訴とする電話相談
特定非営利活動法人小児救急医療サポートネットワーク
看護師1) 医師2)
山下 治子1) 坂井 利衣子1) 阿部 榮子1) 廣岡 由紀子1)
福井 聖子2)
目的
令和3年度の大阪府#8000への相談のうち外的要因による事象を主訴とする相談をまとめたので報告する。
方法
令和3年度の1年間で大阪府#8000に寄せられた全相談件数61,365件のうち頭部打撲,外傷,熱傷誤飲の相談と手足の痛み,その他の項目のうち相談内容が外的要因に関するもの(鼻の異物や魚骨による咽頭異物,陰部に関する事象など)を抽出した。
考察
●外的要因に関する相談件数は全体の2割を占め、深夜帯も件数は少ないが 相談はなくならない。これは子どもの就寝後に突然起こる手足の痛みや、日中に起こった事象に関して保護者の不安が急に高じることなどが理由として挙げられる。
相談内容は「受診について」が大半を占めており、突然の外傷などによる。
●子どもの啼泣で保護者は不安となり受診の判断に迷うことや頭部打撲や誤飲など生命の危機に直結するという恐怖心が反映することが考えられた。
●相談後の対応は「助言のみ」で済む相談も多く、#8000での傾聴とアドバイスにより保護者が落ち着いて子どもをみることが出来ていると言える。
●手足の痛みや熱傷では受診が必要と判断し受診を勧める場合が多いが夜間では外的要因による事象に対して受診可能な施設が明確でないことも保護者の不安が増加する一因である。
結語
外的要因に関する相談は全体の2割を占め,そのうち8割が受診に関する相談であるが#8000での相談により不安の軽減と家族看護力が向上し自宅での経過観察が可能となる相談内容も多い。
#8000での相談に加え,対応可能な受診先の確保や明確化は保護者が安心して子どもをみることができる一因となる。
②退院後の新生児に対する産科アンケート
特定非営利活動法人小児救急医療サポートネットワーク
看護師1) 医師2)
福井 聖子2) 阿部 榮子1)
目的
大阪府小児救急電話相談(#8000)では0歳児の相談が多く、新生児も年々増加し、近年生後1週目が多い。大半は育児相談の類だが、不安の強い保護者や疾患の可能性を否定できないとき、感染症の多い小児一次救急医療機関紹介に躊躇することがある。新生児医療のネットワークは正常分娩で退院した新生児は対象外であり、出産施設と小児科医の連携が重要と考えられ、現状把握のため産婦人科医対象にアンケート調査を行なった。
方法:2023年3月、大阪府内分娩施設産婦人科医123名に配布し56の回答を得た(回収率45.5%)。
方法
令和3年度の1年間で大阪府#8000に寄せられた全相談件数61,365件のうち頭部打撲,外傷,熱傷誤飲の相談と手足の痛み,その他の項目のうち相談内容が外的要因に関するもの(鼻の異物や魚骨による咽頭異物,陰部に関する事象など)を抽出した。
結果と考察
自院退院後の新生児への夜間対応として44名(78.6%)が電話相談に応じていたが、公的な育児相談電話への希望は8割近くあった。診療時間外に新生児に病気の疑いがある場合、「診察や併設の小児科医が対応」日中44(78.6%) 夜間32(57.1%)、「小児科医を受診するように伝えるが、紹介はしていない」日中21(37.5) 夜間30(53.6%)で、特に夜間は受け入れ先を明確に保護者に提示できていない率が高かった。自院退院時に小児科を紹介するかという質問では、35.7%が「特に紹介していない」であった。総合病院では必要性を感じていない可能性があるが、分娩数の少ない診療所で率が高く、紹介しやすい仕組みづくりを検討すべきである。 育児相談に関しても、小児科医と「十分連携+連携」は6割弱で満足な状況とは言い難いかった。育児相談では助産師の力が大きく、今後助産師と小児科医の連携強化も検討すべき課題の一つである。自由記述でも、生後1~2か月の児に関して、産婦人科から小児科への連携が十分ではないとの指摘があった。新生児を受け入れている小児科医の「見える化」が必要と考えられた。
結語
新生児のケアや保護者支援について、小児科医が新生児診療に積極的に携わり、産前産後の切れ目のない支援が可能となるように、産婦人科との連携に貢献できる方策を検討していきたい。
みなさまお疲れ様でした。
発表で使用したスライドは下記からダウンロード可能です。